イベントレポート【命をいただくことと向き合う】狩猟体験ワーケーションを開催しました

2023年2月4日(土)-5日(日)、4月1日(土)-2日(日)で計2回の狩猟体験ワーケーションを開催いたしました。「命をいただくことと向き合う」をテーマに、座学、アニマルトラッキング、罠設置体験、止め刺し見学、解体、ジビエBBQなど盛りだくさんの内容で実施しました。

快生館のある古賀市薬王寺エリアは、古賀駅から車で15分という立地にも関わらず、竹林や山に囲まれた野生動物が多く生息する自然豊かな場所です。特に鹿の数が多く、ワーク時に鹿の鳴き声が聞こえたり、帰り道には鹿の群れによく遭遇したりします。一方で、野生動物による農作物への被害や高齢化に伴う狩猟者の減少といった地域課題を抱えています。地域課題解決の一助となり且つ命をいただくことと向き合う体験をしてほしいという想いから、狩猟体験ワーケーションの実現に至りました。

自分自身も昨年狩猟免許を取得し、狩猟を暮らしの一部として取り入れていきたいという想いが東京から福岡へ移住した理由の一つでした。我々の先祖が生きるためにおこなってきた狩猟を、自分の手や頭を動かさなくても何でも手に入る現代で敢えて挑戦をしたい。より本能的に自分自身を開花し、生きてる実感を心の底から得られる体験を自分自身もしたいし、いろんな人に体験してほしいという個人的な想いがありました。

開催スケジュール

今回開催したスケジュールは以下の通りです。

<1日目>
9:00〜13:00: コワーキングスペースのワーク利用(希望者のみ)
13:00~13:30:受付、自己紹介、アイスブレイク
13:30〜14:30:座学、罠かけ練習
14:30〜14:40:休憩
14:40〜17:00:アニマルトラッキング、罠の設置
17:00〜18:00:自由時間
18:00〜20:00:ジビエ懇親会
20:00〜   :自由時間

<2日目>
10:00    :集合
10:00〜12:00:罠の見回りチェック、止めさし見学
12:00〜13:30:解体
13:30〜14:30:解体したお肉でランチ
15:00〜16:00:振り返り、ディスカッション
16:00    :解散

2日間の開催で、日帰りと宿泊する参加者がそれぞれいました。参加者は古賀市、福津市、福岡市など主に近隣からで、本格的に狩猟免許を取得したいという方から、興味本位で体験してみたいという方まで様々。第2回目は親子で参加する方もいらっしゃいました。

今回は新宮で活動するFUKUOKAわなシェアのメンバーに全面協力いただき、狩猟について座学から実践まで丁寧にご指導いただきました。

座学

そもそも狩猟とは、わな猟・銃猟など猟の種類、狩猟の目的、やり方など、初心者でもわかりやすい内容をFUKUOKAわなシェアの土肥さんに解説いただきました。また普段は会社員として生活されている中での狩猟のサイクルや、危険な体験など、狩猟者自身が経験してきた生の声を聴くことができ、私自身も非常にためになりました。野生動物と自然資源の循環についてを身体を使って理解するアイスブレイクもおこない、自らが当事者となることで理解も深まりました。第2回目には古賀市農林振興課の福田さんにお越しいただき、古賀市における有害鳥獣被害の実態などをわかりやすく解説いただきました。

アニマルトラッキング

薬王寺の野生動物が多く出没する場所に足を運び、足跡や糞の痕跡を確認したり、事前に設置していたトレイルカメラで捉えた動物の様子などをチェックしました。鹿が背を伸ばして届く範囲の木の葉っぱがすべて食べられていたり、乾燥しきっていない糞の痕跡などを見ると、確実に野生動物がそこで生活しているんだなということを実感できました。

罠の設置体験

今回は快生館の向かいにある家族温泉風呂「山の音さん」と、快生館から5分ほど歩いて登った場所にある旅館「鬼王荘さん」にご協力いただき、それぞれの土地に罠を設置させていただきました。今回使用したのは軽くて初心者でも扱いやすい「くくり罠」です。土に軽く埋めた踏み板を踏むと、バネの力でワイヤーが足に締まって捕らえるというもの。アニマルトラッキングで確認した動物の痕跡などをもとに、どこにどう設置したらかかりやすいか、狩猟登録者のわなシェアのお二人に教わりながら各自設置体験をおこないました。

ジビエBBQ懇親会

一通り体験が終わった後は、事前に用意していたジビエ肉でBBQを開催しました。鹿、猪、アナグマ、鴨、テンなど色んな種類のジビエを食べ比べながら味の違いを楽しみました。またBBQからFUKUOKAわなシェアのメンバーも多数参加してくださり、既に狩猟をやられている方々からの生の声も聞くことができ、勉強になるとともに楽しく懇親する時間となりました。

罠の見回り、止めさし見学

前日に設置した罠に動物がかかっているか見回りをおこないました。第1回目はなんと鹿が3頭もかかり、止めさし見学も実施しました(第2回目は残念ながら捕獲がなかったため、写真や映像で止めさしのレクチャーを受けました)。止めさしについては狩猟免許および登録が必要で、狩猟の中では一番危険な部分なので、有資格者の指示に従い参加者は少し離れたところから見学をおこないました。興奮している鹿をうまく押さえて、なるべく苦しまないように仕留めることが大切ですが、経験を重ねないとスムーズにおこなうのは難しそうです。命をいただくことがどういうことなのか、自分の身をもって体感することができる非常に貴重な経験でした。

解体、精肉

止めさし後十分に放血した後に、解体・精肉作業をおこないました。止めさしもそうですが、モツ抜きや皮剥のやり方で味も変わってくるので、内臓を傷つけないよう丁寧におこなっていきます。この辺りは経験豊富な猟師さんに教わりました。また特に暖かくなるとダニがたくさん付着しているので、ダニが付着しづらい衣類を着るなど対策が必要です。

第2回目は罠にはかからなかったですが、事前に用意していた枝肉のイノシシで解体精肉を丁寧におこないました。今まで食べていた加工済みのお肉が、どこの場所の部位でどういう食べ応えなのかなどを知ることができました。

ジビエランチ

2日目のお昼は事前に用意していたジビエカレー、また参加者が解体精肉したばかりのお肉でBBQをしました。先ほどまで生きていた動物を自分自身で解体精肉し、それをすぐに調理しいただく経験はなかなかできません。新鮮なお肉は美味しくとても好評でした。

振り返り

2日間の体験を通して、どう感じ、またどういう気持ちの変化があったかなどを参加者自身が振り返る時間を設けました。狩猟免許を取得しようとしている参加者は、テキスト上だけではなかなか得られない実践的な部分を体験できて非常にためになったという意見や、興味本位で参加いただいた方も命をいただくことはどういうことなのか自分自身の体でより実感できたという声がありました。

参加者の声

・座学&簡単なトレッキングを想像していたため、体験の比重が高くて大満足だった。
・参加者の人数の規模が多すぎず少なすぎずで、すごくよかったです!
・非日常の極み体験をさせていただきました。快生館の良さも体験できましたので、今後も利用させていただきたいと思います。次回はぜひ宿泊利用したいと思ってます。
・罠の仕掛けから解体まで、予想以上に体験、理解ができました。
・5段階評価の5を超えた満足です。本当に参加して良かったです。

参加後にご回答いただいたアンケートより抜粋しております。

おわりに

狩猟については賛否両論の意見があるかもしれませんが、個人的には命をいただくことがどういうことなのか身をもって経験することで、より感謝して食べることができるようになると思っています。そういう意味では、食育として子どものうちから「食べる力」(生きる力)を育てる機会として、是非親子で本プログラムにご参加いただければと思っています。

また狩猟とは別に農作物などへの被害を軽減するため年間通して有害鳥獣駆除をおこなっており、そこで駆除した鳥獣が多く廃棄されているという実態があります。人間のエゴであることは間違いないですが、せっかく捕獲した動物の命が無駄になってしまっているのはもったいないことです。命に感謝し美味しくいただくことが本来あるべき地球のあり方ではないでしょうか。

第1回、2回ともに好評で、引き続き狩猟体験ワーケーションは定期開催していく予定ですので、興味がある方は是非ご参加ください。秋以降での実施を予定しており、またホームページやSNSで情報発信させていただきます。

文:(株)SALT 宿野部真央